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川端康成『伊豆の踊子』|文学さんぽ

情緒あふれる景観と風土が生んだ『伊豆の踊子』

日本文学史上、最高峰に位置する存在であり、日本初のノーベル文学賞を受賞した作家が川端康成です。川端文学の真価は、その独特の筆致と情景描写にあるといわれています。川端康成筆による小説で綴られる物語の多くは、劇的な展開を見せたり激動の時代背景や波瀾万丈な年代記のものではありません。むしろ、主人公が遭遇する日常を淡々と描き、登場人物の心理描写を簡潔に綴った作品が大半です。しかしながら、その単純なストーリーの中に描かれた叙情的で透明感のある文章が、不思議に真に迫って読者の胸を打つのです。

数ある川端康成の名作の中でも『雪国』と並んで最も人気が高く、何度も映像化されているのが『伊豆の踊子』です。今回は、日本文学における紀行文学の金字塔である『伊豆の踊子』を読み解きながら、この名著を生んだ伊豆地方をめぐる旅に出てみましょう。

時代の転換期に誕生した名作

物語の面白さで人気を得ている作家は数多くいますが、小説を「紙に綴られた文章によって読者を感動に導くもの」と定義するならば、小説家の実力は日常生活を綴っただけの文章でいかに人間の業を描き、人間社会の問題点を浮き彫りにするか、という点にあるといえます。平易な文章でありながら、風景描写に独自の境地を拓き、苦しみ涙する市井の人々を描いた川端文学は「川端調」ともいうべきひとつの文学様式を創造した功績が讃えられます。

『伊豆の踊子』が川端康成作の短編小説として発表されたのは大正15年(1926年)の雑誌「文藝時代」1月号と2月号で、このとき川端康成はまだ27歳で『伊豆の踊子』は彼が小説家としてその名を世間に知られていない初期の作品です。

『伊豆の踊子』は読者から好評を博したことから翌年の昭和2年には早くも単行本として出版され、この作品が川端康成の実質的なデビュー作ともなりました。『伊豆の踊子』が雑誌に連載された年は12月25日に大正天皇が崩御され、昭和元年はわずか6日間しかなく翌年の昭和2年が実質的な昭和元年だったことを考えると、同年に単行本として刊行された『伊豆の踊子』はまさに昭和という新しい時代の幕開けを象徴する作品であったともいえるかもしれません。[つぎへ]

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